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小説版ガールズ&パンツァー読んだよ(第1巻)

更新日:2018年9月20日

先日本屋巡りをしていたら小説版ガールズ&パンツァーが全3冊まとめて売っていたのでつい買ってしまいました。

ガルパンにハマって2年と半年経つのでほんと今更って感じです。


結論から言うと普通に読んで良かったと思いました。


以前から「小説版はアニメとは若干違う」と聞いてはいたんですが、想像以上に違いますね。違うといっても勿論大筋はアニメと同じで、そこに台詞と描写が追加されていたりマイナーチェンジが入っていたりするので、なんというか手触りが違います。

「アニメ版観たから敢えて小説読む必要もないかなぁ…」と思っていたんですが、おおよその展開が分かっていても全然面白いです。

むしろ知ってるからこそ「どこがどう変わってるか」っていうのを見つける楽しみがありますね。ドラクエ1をクリアした後にドラクエ3でアレフガルドに突入した時みたいな感じです。

この記事では小説版ガルパンの1巻で気になったところやアニメ版との細かい違いを

今のところ読む気はないけどどこが違うのか気になる人・前から気になってたけど買わずにいた人向けに書いていきます。ここで書いてあることが全てではありませんので、気になった方は実際に読んでみることをお勧めします。


まず第一に、小説版とアニメの最大の違い。それは視点の置き方にあります。


アニメ本編が西住みほを中心にちょくちょく周りを映すTPSだとしたら、

小説は武部沙織の視点で物語が進行するFPSです。

常に沙織の一人称視点で解説されるので、アニメ本編とは角度が違います。

名づけるなら「ガールズ&パンツァー 武部沙織編」ですね。


小説版は完全に沙織視点なので、沙織の目の届いてない所で起きているような出来事、例えばみほが参加した車長の作戦会議やⅣ号以外の車輌内で交わされるような会話、敵側の戦車内の会話や描写などはカット、またはみほが経験するはずだったシーンを沙織が経験するように変更が加わっています。それに加えて沙織にしか見えていない風景描写が多く追加されています。みほがいない間沙織達は何をしていたか、沙織が朝起きて華と一緒に登校する様子、部屋で一人思い悩む様子、各シーンにおける沙織から観た他のキャラの挙動や様子、モノローグによる心理描写など、映像で見えていなかった武部沙織と彼女のフィルターを通したキャラクター描写が沢山見られます。

みほをすぐ隣から見てるような視点なので、アニメではつらつらと流れていった些細な描写も沙織の脳内の解説とリアクションによって詳細化されていて、とても臨場感がありました。


1巻の初っ端から意表を突いてきます。

「ヘイ彼女!」から始まるみほ達の出会いから戦車探しのくだりはカット。いきなり校内バトルロイヤルの日の朝から物語は始まります。この時点であんこうチームは4人までそろっています。試合中に麻子と合流するので、あんこうチーム結成の日からスタートした感じです。

この辺からしてあまり初見向けではないですが、それは裏を返せば内容を知ってる人も楽しめるように作られてるってことですね。


以下は気になったアニメからの変更点の羅列です。


「諦めないこと、そしてどんな状況でも逃げ出さないこと」はまほの言葉に変わりはないですが、沙織がこの言葉を知った媒体はテレビ取材映像ではなく戦車道ショップの店内の張り紙に書いてあった言葉だそうです。この台詞は小説版では何度も出てくる重要な台詞になっています。みほの立場だと嫌味に聞こえてしまう台詞ですが、小説版1巻では各シーンで突き刺さる核心を突いた台詞であることが強調されていますね。


優花里が登場してから「さすがは西住殿!」的な台詞が10ページに一回くらいのペースで出てきます。彼女の心酔ぶりも強調されてる感じがします。


校内戦での戦車初乗車時、みほの台詞や指示が細かく描かれていて他の子との経験値の差がアニメより顕著になってますね。

戦車に乗ってからのみほは台詞は節々に周りと大きく温度差があり、アニメには無かった指示や戦場における豆知識も自然と湧き上がるようにハキハキ喋っています。

一般的な女子高生の感覚を持っている沙織を通して見ているから、より強調されて見えるんだと思います。

戦車の射撃の一発目、二発目、三発目と、発射した回数だけ砲身の状態が変化し、次の照準の調整方法が微妙に変わることまで都度的確に指示してました。

こういう戦車の知識が劇場版小説とは違い、地の文章でなく台詞に落とし込んであるので難しい単語が出てくることが少なく、文章を噛み砕くのが苦手な私でも理解しやすかったです。

でも個人的に校内戦のみほはちょっと不気味。

アニメを知らない前提で見ると、西住みほが登場してから大したキャラ紹介も無く、よく分からないうちに試合が始まり、周りの人物が不慣れな戦車を前にあわあわしている中、それとは逆に試合直前まで一人だけコケそうになったりあわあわしていた西住みほという子だけが突如冷静になり、敵を見据えて淡々と敵勢力殲滅に向かって動いている。

アニメは細かい会話は省略されてたし、可愛らしい見た目も映像でビジュアル化していたので、よく二次創作のネタにされる「みほの狂気」みたいなのは私個人はあまり感じていなかったのですが、字に起こすと確かに普通ではないのが伝わってきました。


最初に「あれ?」ってなったのが車長を務めた沙織が華にキックするシーンですね。

車長の操縦手へのキックがダイレクトじゃなくて車長席についてるペダルと連動した板が背中にあたる仕組みになってるみたいな描写になってました。

巻末のあとがきによるとこれは苦肉の策だったようで、普通は操縦手に足が届かないためリアリティ重視にしたらしいです。

そういやアニメのダイレクト車長キックは沙織と華でしか描かれてなかったけど麻子も普段はみほに蹴られてるんだろうか…。小説版ではみほがペダルで麻子の背中を叩くシーンが結構ありました。


麻子に「午後からの天才」という二つ名があるらしいです。

戦車道をやる前から校内で有名な才女だったとか。学年主席の名が知れ渡るってことは、大洗はテスト成績上位者が廊下に張り出されるタイプの方式なのかもしれません。結構勉学に力を入れてる学校なのかな?

本編、最終章、ドラマCDでも「留年」というシビアな単語がちょいちょい出てきますが、テストの成績が進級にダイレクトで関わってくるってのは普通の高校ではあまり聞かない気がします。あ、偏差値の基準の話は荒れるのでNGでお願いします。


試合中にみほと再会した後、麻子は気絶した華の膝の上に乗って戦車を操縦します。

アニメで麻子が初めて操縦するシーンの直前、みほがさらっと失神した華を操縦席からどかしてましたがあの狭い空間+緊迫した場面で女子の腕力で迅速に人間一人を席からどかすのは文章にするとなんかごちゃつきそうなのでこの簡略化は自然に感じました。

操縦手キックの件といい、筆者は物理的な状況のリアリティを重視しているんですかね。

アニメは勢いで見せてますが、字に起こすと違和感になりそうですし不満は無いです。


校内戦を終えた夜、沙織が自室で蝶野教官と電話してあれこれ教えてもらうイベントがありました。こういう見えなかった描写を描いてくれてるのは嬉しいです。

この日から少しずつ女子高生・武部沙織→戦車乗り・武部沙織への変化が始まります。

ちなみにみんなで戦車の中で使うクッションや芳香剤を買ったとき、既に沙織は劇場版で使用していたマグネットとホワイトボードも100均で購入していたようです。

というか小説版は蝶野教官の出番が多いです。大洗女子に何度も指導しに来てくれてるようです。教官はバババーッとかダダダーッとか、某ミスターみたいに指示にやたら擬音が多い天才特有の感覚的指導法ですが、大洗女子も天才集団だから噛み合うんでしょうか。


聖グロとの練習試合の展開は序盤はだいたい同じですが後半が結構違いますね。

アニメでは4輌撃破してましたが小説版ではフラッグ車と一騎打ちに持ち込むも撃破数自体は伸びず、結果だけ見れば聖グロの圧勝という内容。まぁ聖グロはラスボス格ではあるので、初戦はこれくらいの結果のほうが自然な感じはします。

試合後の去り際のダージリンの「また公式戦で戦いましょう」という台詞は最終章で実現するんでしょうか。罰のアンコウ踊りはあんこうカメさん以外も全員参加。

小説版ではこれが大洗女子戦車チームの最初の団結であり、後のプラウダ戦のアレにも繋がっていきます。


全国大会抽選会がやってきました。

抽選会場はさいたまスーパーアリーナが実名で登場。アニメに描かれていた抽選会場って実在するやつでしたっけ?

抽選前にみほとまほが再会します。抽選会後じゃないんです。

アニメでは印象悪い役はエリカでしたが、あの憎まれ口はまほが文字通り代弁します。

嫌味を言うのではなく、「エリカならこう言うでしょうね。」的な感じで。流石まほというか、エリカの台詞の再現度が無駄に高くかなり嫌味に聞こえます。アニメの「まだ戦車道をやっているとは思わなかった」も大概でしたが…

でもやっぱりみほへの悪意はなさそうです。アニメのアレも

「まだ戦車道をやっているとは思わなかった」(よかった。またみほと戦車道ができる)

というアレだったわけですしね。口下手というか天然というか…。

スタッフのコメンタリー系の情報や裏話はあまり調べてないのでよく知りませんが、

なんとなくまほの優しい設定は後々出来上がった設定な気もします。水島監督がガルパンの約2年後に手掛けた「SHIROBAKO」に出てきた監督も「作品は作っていくうちにキャラも成長していく」って言ってたし、実際ガルパンではキャラクター達の細かい設定(学年や年齢等)から演技に至るまで、初期と今ではだいぶ変更が入ってますよね。

ガルパンにも「SHIROBAKO」で描かれた制作現場のリアルに通じる背景があるのではないかと思いました。(総集編2回入ったし…)


優花里のサンダース偵察あたりで気付きますが、麻子がアニメとちょっと違うんですね。

麻子の口調はそこに至るまでもちょいちょい違和感あったんですが、この辺りで麻子が優花里を「秋山」と呼んでいることが判明し、やっぱ私が知っている麻子とはどこかが違うというのが如実に出ます。麻子が「さん」付けで呼ぶ場面って本編ではなかったんでしたっけ?

当時の情報量で書くのは大変だっただろうなぁ。

ここのシーンで触れられていますが、他校への偵察中に捕まると試合が終わるまで捕虜にされることもあるみたいです。公式にこれ↓と似たようなルールあったんですね。


サンダース戦前に蝶野教官による地獄の特訓が入ります。聖グロ戦の後に大洗の練度が爆上がりしたのはこの特訓があったからだったんですね。とりあえず最低限戦える程度の実力はついたといったところでしょう。大洗はどんどんたくましくなっていきます。


サンダース戦開始。

この試合からチーム名が動物名称になりますが、あのネーミングは沙織が使うホワイトボードに貼り付けるマグネットになぞらえた名前だそうです。

試合中、サンダースに追い詰められた場面で沙織は「諦めないこと。そしてどんな状況でも逃げ出さないこと」というまほの言葉を思い出します。改めて考えるとあの台詞がみほの「諦めたら負けなんです!」とリンクしてることにようやく気づきました。

「諦めたら負けなんです!」についてはアニメだけ見た感じだと、まほの言葉とは関係なくみほ自身が過去に諦めたり逃げだした苦い経験を思い出しそれを繰り返すことを拒否したのだと思っていたのですが、まほの言葉と照らし合わせてみると

・みほの根底に眠る戦車乗りとしての姿勢や本能がまほと同じ性質を持っている

・まほの言葉を覚えていたことで突き動かされた

という持って行き方もできて面白いですね。

というか沙織がまだこの言葉を意識に置いてたことにちょっと驚きました。小説版では蝶野教官がその言葉に触れるシーンがあったから、まほの影響というよりは蝶野教官の影響でしょうか。


その後無事大洗女子はサンダースに勝利します。

試合終了後、ケイは試合前にメアド交換していたオッドボール秋山の携帯に謝罪メールを送ってきました。

アニメと違ってサンダース側のやりとりが描写されないため無線傍受がアリサの独断であったことや、アリサがケイに「バッカモーン!!」と叱られたことを読者や沙織は知らないわけで、事情を知らせるためなので仕方ないんですが、メールの「部下が勝手に~」という文はちょっとケイらしくなく感じてしまいました。この説明が無いとサンダースの無線傍受はケイの命令で行われたみたいに読者に捉えられてしまうかもしれないからこうせざるを得なかったんですね。

沙織視点で物語をなぞってようやく気付きましたが、それを考えるとアニメの「盗み聴きなんてつまらないことして悪かったわね」という台詞は大洗側の立場になって考えると「無線傍受にはケイも加担していた」と思われてしまう恐れがありますし、部下の犯した罪を自分も被る潔さのある台詞だったんですね。まぁ劇場版の時点ではアリサが盗聴してたという事実はいつの間にか大洗側も知っていることになってましたけど…。


ケイのみほへのハグが杏へのハグに変更になってました。結果的にケイとみほは絡まずじまい。


━━━ That's 戦車道!

    これは戦争じゃない。

    道を外れたら戦車が泣くでしょう? ━━━


個人的にこのケイの台詞は前半でも上位に食い込む重要な台詞だったと思うので、これはねじ込んで欲しかったです。この台詞を聞いてみほは本当に嬉しかったと思うんです。

サンダース戦の試合展開については熱闘戦車道なる番組で試合の様子がダイジェスト放送されたそうです。番組名からして元ネタは熱闘甲子園でしょうか。マイナー競技のわりに結構メディアに取り上げられてるんですね。

ここら辺の描写によると沙織の父親は頭が固く、ネトゲとかは禁止されてるらしいです。あんこうチームで唯一沙織の家族は未登場ですが、ここの描写で書かれている沙織の親の見ていない所でも言いつけを守るという思考を見ると、なんやかんやで良い父親なのが伝わってきます。


とりあえずここまでが1巻で気になった内容。勿論ここに書いてない変更点も多数あります。1巻はサンダース戦終了まで描かれました。

全体的に蝶野教官の出番が多かったのは作者さんの独断だそうです。

2巻以降はかなり変更点が多いのでまだ感想がまとまってませんが、気が向いたら2巻以降のまとめ記事も書こうかなと思います。気が向いたらね。


この記事を読んで興味を持った方は是非小説版のガルパンも読んでみてください。

きっと楽しめると思います。

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